ドイツ・ミュンヘンの職があるホームレスの貧困問題に住宅事情がある

2019年6月7日

裕福な街ミュンヘンにもホームレスはたくさんいる

格差社会は世界の隅々まで浸透してきています。

世界第四位の経済大国でEUの優等生といわれているドイツも例外ではありません。

地図で見ると分かるのですが、ヨーロッパで一番多くの国と接している国はドイツです。

デンマーク、オランダ、ベルギー、ポーランド、チェコ、フランス、ルクセンブルク、スイス、オーストリアと9カ国と隣接しています。

ミュンヘンはドイツ南部、オーストリアに近くバイエルン州最大の都市です。

ドイツ国内でもベルリン、ハンブルクに次ぐ規模第三の都市です。

BMWやシーメンスの本社があることでも有名で、経済的にドイツで1,2を争う豊かな都市です。

しかし貧国からの移民だけではなくドイツ人もホームレスになってしまっています。

3Dプリント住宅が世界の住宅問題を解消するか?

2017年のミュンヘンのホームレスの情況を伝えている動画

貧困に喘ぐ移民のホームレスの方もでてきますが、ドイツで職があるホームレスもこの動画に登場します。

ドイツ語ですが赤丸のボタンをクリックすると英語の字幕を表示することができます。

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小売の営業をしていたトーマスがホームレスになるまで

トーマス・モーゼスさんは以前は小売の営業マンをしていて酒屋を経営されていました。

現在は週四日清掃員の仕事をし、もう2年以上橋の下で過ごす生活をしています。

冬季の気温はマイナス10度以下になることも珍しくありません。

週四日の給料ではアパートを借りることはできませんし、ホームレスシェルターにはアルコール中毒者などがいるので使用したくないといいます。

冬季の寒さは死に直結するので近所のボランティアの人々が毎日8時に、温かいお茶や食料を差し入れしてくれます。

ボランティアの女性は普通に働いている人々がホームレス状態でいることに驚いたと言っています。

彼女のホームレスのイメージはビール瓶を持って酔っ払っているものでした。

東京のネットカフェ難民の方も仕事をしながら、仕事を探しながらのホームレスぎりぎりの状態です。

日本のように深夜パックが激安なネットカフェのようなものが近くにあれば、トーマスさんは橋の下で寝なくても
よいかも知れません。

生活保護を受けていてもアパートを借りられない

ミュンヘンでの生活保護から出る住宅補助のマックスは642ユーロですが、実際には30平米の小さなアパートでも1000ユーロほどしますし、順番待ちで行列がついています。

そんなに家賃にお金がかかるとトーマスの収入では賄えません。

トーマスさんは仕事が終わると、電車や地下鉄に乗って街をぐるぐる回りながら時間を潰します。

1ヶ月乗り放題のパスを持っているので冬場の暖は電車や地下鉄の中でとるのです。

一見ホームレスには見えない隠れたドイツのホームレス

トーマスさんはとにかく目立たないようにして生きています。

目立たないというのはホームレスに見えないようにということです。

毎日ヒゲを剃るしシャワーも毎日浴びるようにしています。月一回床屋にも行きます。

見た目では誰もトーマスさんのことをホームレスだとは思わないでしょうし、彼自身も社会と繋がっていることを実感しています。

19歳女性ナディーンのホームレス事情

ナディーンは優秀な学生でしたが母親とのトラブルがありました。

14歳で母親の元を離れ若者生活支援の場所で生活していました。

しかしここでの生活からも逃げ出し、18歳で学校をドロップアウト。

ホームレスからハーバード大学を卒業した女性

今は目的なしに地下鉄に乗って時間を潰しています。

ホームレス当初はパーティーに行って男性と一緒に泊まるような生活でちょっとした冒険のように感じていました。

そんな生活にも嫌気がさし、母親のところに戻ろうかとも考えましたが彼女のプライドがそれを許しませんでした。

時折母親の所に訪れても、仕事をしてアパートで暮らしていると嘘をつきました。

地下鉄のトイレで夜を明かしたこともあります。

妊娠して初めてプロテスタント系の教会が運営しているホームレスの女性専用のシェルターに助けを求めました。

シェルターでは個人の部屋を与えられていますが、数ヶ月の間と約束があるのでいずれ出て行かないといけません。

なんとか安い公営アパートに住みたいと考えていますが、学生と低収入労働者や移民に需要が多く彼らと競合してしまい難しいのです。

ミュンヘンでは年間3200しか公営アパートがなく応募する人は24000人と倍率が8倍近くになります。

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ドイツのホームレス人口は50万人を越える?女性のホームレスは全体の3分の1もいる

ドイツでのホームレスに関する統計はないそうですが、およそ50万人ほどいるのではないかと見積もられています。

ここミュンヘンでも緊急的にホームレスになっているひとが6000人ほどいるとのことです。

ドイツのホームレスの3分の1は女性なのだそうです。

働いているシングルマザーの方もホームレスになってしまうことがあります。

ミュンヘンでは女性用のシェルターが不足していて、団体にミュンヘン外から連絡があると、ミュンヘンには
こないでと追い払わなければならない情況にあるといいます。

スロベニアから来た歯科医がドイツでホームレスになった理由

人、物、サービスが自由に移動できるEUのシステムが出来上がってドイツの住宅事情が悪化しました。

2015年の1年間だけで175000人のルーマニア人、148000人のポーランド人、そしてブルガリアやハンガリーからも似たような人数が移民してきました。

住宅の圧倒的供給不足で賃貸価格も跳ね上がりました。そのせいで上記したようなドイツ人でもホームレスになり得る情況が形成されました。

ガリックさんはスロベニアから1年以上前にドイツに来てホームレスです。

スロベニアでは歯科医でしたが、仕事がありませんでした。

それで家族はスロベニアに置いたまま希望をもって単身で出稼ぎにきたのでした。

仕事はすぐに見つかったのですが、老人介護でした。

歯科医としてドイツからお墨付きを得るまでに時間がかかります。

許可が下りるまで、アパートを借りる十分なお金がないのでホームレスになってしまいました。

死を防ぐための冬季専用ホームレスシェルター

冬はマイナス10度以下になるミュンヘンでは無料で利用できるシェルターがホームレスの人々に開放されます。

夕方5時から翌朝8時までの9時間、1000台のベッドです。

ミュンヘンのモットーは「誰も我々の街で凍死させない」です。

このシェルターを利用する90%が移民、残り10%がドイツ人となっています。

60歳を過ぎて仕事をしながらホームレスな女性

62歳のグレタさんは30年借家に住んでいましたが、大屋さんに追い出されてしまいました。

約1年間彼女はホームレスの状態にあります。夏は外で寝ています。

物も多く所有し、家賃だけが不足する状態でした。

以前の生活での思い出の品々は全て処分し、今はスーツケース一つで生きています。

子供の重荷になりたくないこと、そして近年では若い人でも生きることが大変だとしっているので子供の世話になるつもりはないそうです。

ホームレス問題の解決の糸口は全くついていない

毎月ホームレスは増え続けている情況にあり、長期的はおろか中間的目処も立っていません。

長期的には公営住宅を多く建設することしか手立てはありません。

このような深刻なホームレス問題がまだなかった2013年にミュンヘンがあるバイエルン州は資金を得るために33000軒の公営住宅を売ってしまいました。

ですからミュンヘンには現在8000軒しか公営住宅がありません。

ミュンヘンは12億ユーロをかけて1200軒の公営住宅を買戻し、新たに3000軒を建設しようとしています。

それでもかつての半分ちょっとにしかなりません。いかにこの問題が深刻でお金のかかることかが分かります。

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