チリの暴動の原因は格差社会と貧困か。地下鉄の賃上げで怒り狂う学生や庶民
チリの首都サンティアゴで始まった学生主体の抗議活動
サンティアゴメトロ地下鉄の運賃が4%上げられたことによって、10月14日頃から高校生らが運賃支払拒否のキャンペーンに打って出、警察官と小競り合いが生じるようになりました。
18日には暴徒の規模が拡大し、合計81の駅に危害が加えられ17の駅が燃やされました。同日チリ大統領のセバスティアン・ピニエラ氏は非常事態宣言をし公共物の破壊を食い止めるためサンティアゴに軍隊を派遣しました。
運賃値上げは撤回されたものの怒りが収まらない市民
10月21日の段階で8名が命を落としています。非常事態宣言下で夜間外出禁止令が出されたものの暴動は大きくなっています。
動画内では暴徒に破壊された駅の掃除を市民がしているシーンも映し出されています。
19日には地下鉄賃上げの撤回がなされましたが、暴動が収まる気配はありません。
それは地下鉄だけではなく生活費の上昇、収入の格差不平等、水道民営化による水道料金の上昇、政治家の汚職などチリ国民の怒りが爆発しているからです。
暴動は鎮まるどころか他の地域にも拡大 APECもCOP25もチリ開催中止に
首都サンティアゴだけではなく、サンティアゴから離れた都市コンセプシオン(340キロ)、サンアントニオ、バルパライソ(120キロ)に及んでいます。
11月に開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)も12月予定だった地球温暖化対策の会議(COP25)もチリでの開催が中止されました。
セバスティアン・ピニエラ大統領の、「国民の利益、ニーズ、希望を第一に問題解決していく所存」という演説も空疎に聞こえます。それなら国民こんなに怒っていないぞと。
国際会議なんて血税垂れ流しで行われるので中止になってよかったという市民もいます。
それらの会議は確かに有益かもしれないけれど、その利益を国民に分配するシステムがないチリでは全く無意味だと言う女性。
国民を蔑ろにして外面ばかり良くみせるピニエラ政権を痛烈に批判しています。
10月30日の段階では死者が20人に増えています。
香港のデモや暴動と違い、チリは経済的に日の目を見たことのない国なので蓄積した鬱憤のため暴れ方も桁違いです。
火炎瓶も投げまくりです。
火炎瓶が直撃して同僚に消火してもらう軍の兵士。なかなかの地獄絵図です。
チリの生活費の上昇と格差社会
チリは人口約1800万人、一人あたりGDPは150万円ほど。経済がハチャメチャである南米においては優等生とわれていたチリです。
2019年の6月には電気料金が10%値上げされ年末にもさらに10%値上げされる予定。
公共交通機関は高く、特に地下鉄は南米で一番高い。そして年金支給額は国民の満足行く額ではありません。
一人あたりGDPの150万円は南米ではウルグアイの170万円に次いで2位となっていますが、生活費が高いため庶民の暮らしは30年前のほうがまだ良かったという人もいます。
しかし2000年の貧困ラインにいる人の数は国民の60%でしたが、現在は6%にも減少しており(政府発表数値)、そこは優等生と呼ばれる所以なのです。
ですがチリでの大学の学費は他のラテンアメリカ諸国と比べ高く、大学進学は富裕層に限定されることが多く、大卒で良い職業につくものと高卒でその他の職につくもので激しい格差が生じています。
というのもチリでは国立の大学が少なく営利目的の私立大がほとんどだからです。
チリの貧困
この動画では8.6%つまり150万人の人々が貧困に喘ぎ、4.5%=80万人の人々が衛生が行き届かない環境での生活を強いられ、9.8%(180万人)がタコ部屋生活しています。
そして2.3%が絶対貧困状態。この動画はキリスト教系の慈善団体の活動PRでした。
移民の受け入れに寛容なことも経済に悪影響を与えているのか
2017年のアルジャジーラの動画です。
2012年にはチリには黒人の方はあまりみかけませんでしたが、5年でハイチやドミニカコロンビアから大勢移民としてやってきました。
ここ10年で移民の数は倍増しました。特に多いのはハイチからの移民で、2017年単年で5万人にもなったといいます。彼らはチリの白人から差別され嫌な思いをしながらも必死で生活しているようです。
2019年のベネズエラからの国外逃亡は経済危機により貧しい人々も国外退去していますが、2年前の2017年は中間層の職業人がよりよい生活を求めてベネズエラからチリに移住しています。子供を割と良い学校に入れ生活も安定しています。
チリの出生率は1.8と日本の1.4よりは多いですが労働人口が不足気味で移民を積極的に受け入れています。
このように移民を受け入れた結果、格差社会に拍車がかかり今回の暴動に発展したのであれば近い将来に移民を受け入れるとしている日本も同じ運命になるのかと恐々としてしまいます。