アメリカの車上ホームレス問題:原因、地域別状況、そして支援策の概要

2023年4月13日

アメリカでは、車上ホームレス(Vehicle Homelessness)という現象が一部の地域で問題となっています。車上ホームレスとは、住む場所がなく、自分の車の中で生活を余儀なくされている人々のことを指します。日本の車上ホームレスに関してはこちらの記事をどうぞ。

車上ホームレスの数は全米で10万人とも

アメリカではコロナのこともあり、車上ホームレスに陥る人々が増えていて一説では全米で10万人以上ではないかと言われています。

しかし彼らは車で移動することができるため、その数を把握することは非常に困難を極め、統計上にも現れにくいため隠れたホームレスと呼ばれています。

シアトルでバン生活をしている人々の動画をまず見てみましょう。

シアトルだけで3000~5000人の車上ホームレスが確認されているとのことです。

シアトルの人口は73万人で都市圏人口は400万人です。

シアトルは大きなバンが都市に入るのを規制しているため、大型RVバンで生活している人々は福祉にアクセスできる都市部よりもっと郊外に生活の拠点を置いてしまうため益々貧困化するようです。

広い道路の端に駐車して生活していると定期的に役所の駐車取締の人間によって移動させられます。どこの世界でも同じですね。ホームレスの定住を許さない。しかしシェルターなどを準備してくれるわけではないので場所を移動するだけになっています。

行く先行く先で移動を求められる生活はどんなに過酷でしょうか。かつてホームレスであったボランティアの方が彼らの手助けをしているのが唯一の支援でしょうか。

車上ホームレス現象の原因

車上ホームレスは、住宅が手に入らないために車の中で生活せざるを得ない人々を指します。アメリカで車上ホームレスが増加している背後には、以下のような要因があります。

高い住宅価格と家賃
住宅市場の高騰により、多くの人々が適切な住居を手に入れることが困難になっています。特に、都市部では、住宅価格や家賃の上昇が著しいため、低所得者や中所得者が車上ホームレスに陥るリスクが高まっています。

経済的困難
失業や賃金の停滞、医療費の増加など、経済的な困難が車上ホームレスの原因となっています。

精神的・身体的健康問題
精神的・身体的健康問題を抱える人々は、職にありつけることも適切な住居を維持することも困難な傾向にあり、車上ホームレスになるリスクが高まります。

アメリカ車上ホームレスの地域別状況

アメリカで車上ホームレスが特に多い地域は、高い住宅価格や家賃、高い生活費が特徴の都市や地域です。

先の動画はワシントン州シアトル。車上ホームレスの多い街です。カリフォルニア州ではロサンゼルスとサンフランシスコに、オレゴン州のポートランドも車上ホームレスが多いです。

この動画ではサンフランシスコの車上ホームレスの様子が見られます。

サンフランシスコに住宅を構えたりアパートに住める人は限られた高所得の人々だけです。以前から住んでいた人々は家賃高騰でとっくの昔にサンフランシスコから脱出し、より安い地域へ流れてしまっています。

その際に引っ越し費用がないと持ち物を詰めるだけ詰めて車上ホームレスとなってしまった人もいます。

ニューヨークも車上ホームレスが多いとされていますが、ニューヨークは他の都市と比べ車を所有している人の数がそこまで多くないので実態は分かっていません。

アメリカの車上ホームレス支援策の概要

全米でホームレスの数は2022年のThe Department of Housing and Urban Development (HUD)の調査によると58万人です。

車を持たないホームレスの方が圧倒的に多い状況です。車を持つホームレスの方がストリートのホームレスよりもマシなので支援も限られており全く足りていませんが、あるにはあります。

セーフパーキングプログラム

駐車場を提供して車中泊を認める場所や、シャワーやトイレなどの基本的な生活施設を利用できるセーフパーキングプログラムというものが存在します。

一例として SafeParkingLAの活動を紹介します。ロサンゼルスにあるセーフパーキングプログラムを実施している非営利団体です。

警備員付きの駐車場なので外部からの侵入が制限され車中泊する方が安心して夜眠れるようになっています。

簡易トイレや簡易シャワー、寄付された食べ物があり、住宅を得るための相談に乗ってくれるスタッフもいます。

しかしながらセーフパーキングで車中泊したい場合、電話やウェブから申請後1~3日後に連絡が入り、車両が動くことや有効な免許を持っていることなどがチェックされます。今助けて欲しい!という要求には応えていません。

住宅支援プログラム

低所得者向けの住宅支援プログラムを拡充し、車上ホームレスの人々が適切な住居を手に入れることができるよう支援しているとのことです。

しかし低所得者向け住宅は入居希望者で溢れており、そこに入れないから車上ホームレスをしているというひとも大勢いるのでお話になりません。

コミュニティーアウトリーチ

コミュニティ・アウトリーチとは、個人、組織、または機関が、特定のコミュニティや集団と関わり、つながりを持つために行う取り組みを指します。

ホームレス支援に関しては次のようなものがあります。

●食事の提供
地域のホームレス向けに、無料または安価な食事を提供するソープキッチンやフードバンクの運営。

●衣料品や日用品の配布
ホームレスに対して、衣料品、毛布、石鹸、歯ブラシなどの日用品を無償で提供するプログラム。

●一時的な宿泊施設
ホームレスシェルターや一時的な宿泊施設を提供し、安全な場所で過ごせる環境を整える。

●医療・健康支援
ホームレスに対し、無料または低額の医療サービスや予防接種、健康チェックなどを提供するモービルクリニックや地域のクリニック。

●就労支援
ホームレスに対して、職業訓練や就職支援、履歴書作成のアドバイスなど、就労に向けた支援を行うプログラム。

アメリカ車上ホームレス問題まとめ

車上ホームレス問題の根本的な解決には、住宅政策の改善や経済格差の是正、教育や雇用の機会均等化など、幅広い分野での取り組みが必要ですが現状満足な支援ができているとは言い難いです。

家だけがなく、車が住居でそこから会社に通っている車上ホームレスの方もいるので住宅を得ることが彼らの1番の望みであると思います。

3Dプリンターハウスで早く車上ホームレス問題を解決してほしいです。

日本でも住宅ローン破綻の件数が増えてきています。車上ホームレス問題が日本でも大問題となる日も遠くないでしょう。無駄使いせず慎ましい生活の中に幸せを見出す能力が必要です。