ブレグジットでドイツ銀行が倒産・破綻したらEUも世界経済も崩壊するのか

ここ数年ずっと破綻リスクが報じられているドイツ銀行

ドイツ銀行はドイツのメガバンクです。中央銀行ではありません。因みにドイツの中央銀行はドイツ連邦銀行です。

2015年は30ユーロを超えていた株価も最新のブルームバーグが伝えているところではついに6ユーロ割れしてしまったということです。

ドイツ銀行は実質直近の4年間ずっと赤字を垂れ流しています。

2020年3月ドイツ銀行AT1債返済見送り

ロイターが伝えるところによりますと、ドイツ銀行は1200億円ほどのAT1債の返済(4月30日が返済可能日)を見送ることになりました。

4月30日から返してもよいといことで返さなくても良いわけで、ドイツ銀行は返済しないほうに舵を切ったということです。

ロイターの記事にもありますが、コロナウイルスによる市場混乱時の対策としてなされ、他の銀行も追随する可能性があるとのことでこの見送りがデフォルトを意味するわけではありません。

AT1債は永久債なのでいつ返してもよいということになっています。

ドイツ銀行7500兆円のデリバティブを保有

デリバティブに関してはこちらのページで解説しています。

少し前までは5500兆円という数字でしたが、ドイツ銀行自身がどのくらいデリバティブを保有しているか分かっていないとも伝えられており、最近では7500兆円という数字もでてきました。

デリバティブの中でもスワップ取引の一種であるクレジットデフォルトスワップ(CDS)の割合が多く問題視されています。

簡単にいうとA社がB社から社債を買ったり売掛債権を保有していたりするとします。しかしB社が倒産してしまうとA社は回収不能に陥ります。

それを避けるためにA社はドイツ銀行からCDSを購入します。これは保険のようなもので、一定の保証料を払い続けることでB社が倒産したとしても元本が保証されます。

このようなCDSをドイツ銀行は7500兆円も保有しているのです。

世界経済の雲行きが怪しい今、CDSをこれだけ保有していることはリスク以外の何物でもありません。

ドイツ銀行の大株主・中国海航集団が段階的に株を売る

海航集団(HNAグループ)は航空、不動産など様々な産業に関わっている中国のコングロマリットです。

この海航集団がドイツ銀行の筆頭株主になったのが、2017年。普通株の約9.9%を取得しました。

しかしその後少しずつこのドイツ株を処分する方向で動いており、2019年6月現在では6.3%になっています。

HNAグループは海外にメガトン級の投資をしてきましたが、成長に陰りが見えてきて現在苦戦を強いられ海外の投資から手を引きつつあります。その中に勿論ドイツ銀行株も含まれているということです。

追記:海航集団(HNAグループ)が破綻

コメルツ銀行との合併が失敗に終わる

ドイツ政府はドイツのメガバンクであるドイツ銀行とコメルツ銀行を合併させることで両行の経営不振問題を一挙に片付ける作戦に出ましたが、結果的には合併には至りませんでした。

合併は二ヶ月近く政府も挟んで協議されましたが、リストラを敢行しないといけなかったり、コスト面で折り合いが付かなかったり、合併により経営を立て直すプランが見えなかったりで結局合併しないことになりました。

欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策で銀行の本業が儲からないのでデリバティブに逃げてしまったという経緯があるのでどれだけ話し合っても他に安全で稼げるプランなどでてこないでしょう。

ドイツ銀行は中国ゴーストタウン建設にも過剰投資

ゴーストタウン(英語ではゴーストシティー)には3種類ほどあります。

①工場誘致前に先に街作りをして他から移り住む人への負担を減らすためのもの。後で確実に人が入るがそれまではゴーストタウン。

②不動産投資用のマンションや住居を林立させ、セカンドハウス、サードハウスとしての購入もしくは後に売るための購入なので、買い手がある状態だが人がほとんどいないゴーストタウン。

③開発地域付近の場所が思ったより発展せず、買い手が付かないので建設も途中で終わってしまったような本物のゴーストタウン。

人が住んでいない②、③のゴーストタウンは痛みも早まる上にバブルが弾けると目も当てられないような情況になりえます。

中国政府は住宅の空き率に関するデータを公開していないのでゴーストタウンの実情は現地に夜に行って、部屋の明かりをカウントして調査でもしないと実際のところは分かりません。

ですが、このようなゴーストタウンが中国には50前後あるといわれ、その開発にドイツ銀行が融資していました。これもドイツ銀行の不安材料です。

武漢発のコロナウイルスの影響で益々大変なことになってきました。

ドイツ銀行がロシアマネーをマネーロンダリングしていた

2019年2月、デンマーク最大の銀行であるダンスケ銀行がロシアマネーをエストニアにある支店でマネーロンダリングしていた疑いが持たれていますが、ドイツ銀行も一枚かんでいるとされています。

先ほども述べたマイナス金利政策や超低金利政策の下では銀行は通常業務では利益を出せず、犯罪に手を染めなければならないほど追い詰められてしまいます。

日本で言えば不正融資のスルガ銀行の不正融資、アメリカはウェルズ・ファーゴの顧客名義で勝手に口座を作ったりクレジットカードを契約するという犯罪、そしてこのマネーロンダリング。

銀行の新しいビジネスモデルがこのような詐欺でしかないのであれば銀行の未来は私が言わなくともお先真っ暗ですね。最近就職に関しては外食産業より人気がないということです。

合意なきブレグジットで引導を渡されるか

シティにある海外の銀行ではブレグジットに対応して既に人員を海外に移転させているところがほとんどです。

ブレグジットが本当に実現し、業務も移転しなければならなくなった場合、その移転先はフランスのパリ、アイルランドのダブリン、そしてドイツはフランクフルトなどがあげられています。

海外の銀行がドイツに来るということになるのでドイツ銀行としては敵が増えます。

ドイツ銀行はもとよりEU崩壊の可能性

IMF(国際通貨基金)は2018年にイギリスが合意なきブレグジットをした場合、EU加盟国のGDPはトータルで1.5%減少するという予測を発表しています。

イギリスの輸出先は1位アメリカ、2位ドイツ、3位オランダ、4位フランス、5位中国となっています。

これらの国々もその他の国もイギリスがブレグジットすればEU関税同盟の税率ではなくWTOの税率になるであろうとされています。

このこともヨーロッパ経済に大きな打撃を与えるであろうと推測されています。

アメリカトランプ大統領の自国ファースト主義は勿論イギリスの息もかかっており、イギリスはヨーロッパというよりファイブアイズ(英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の親玉としての立ち位置です。

イギリスのブレグジットがきっかけでEUが崩壊する可能性は否定できません。

EUのリーダードイツの求心力が低くなるとEU崩壊

↑キプロス金融危機のとき(2013)に住民が持っていたプラカード。

ヨーロッパを支配しているのは間違いなくドイツです。

その圧倒的経済パワーを振りかざし、他国は移民問題で困っていますが少子高齢化が進むドイツでは移民を安価な労働力と見なし大量に入れてこき使っています。

ブレグジットはドイツに支配されたEUから主権を取り戻す意味合いが強いです。

EUつまりドイツが他国に押し付ける緊縮財政は特にスペイン、イタリア、ギリシャには重くのしかかり、疲弊してきています。

ブレグジットを皮切りに反ドイツ的ムーブメントが広がるのであればEU崩壊も視野に入ってきます。

ドイツ銀行2022年までに行員の二割を削減

2019年7月7日にドイツ銀行のCEOクリスティアン・ゼーヴィング氏は2022年までに全行員約10万人のうちの約1万8000人を削減することを発表しました。

やはりECBのマイナス金利政策で再建を模索するも相当厳しい情況となっています。

この規模の縮小は20年に渡ってアメリカのウォールストリートとライバル関係での敗北を意味します。世界金融のパワーバランスにも注目です。

世界経済に影響を与えないわけがない

ドイツ銀行倒産、イギリスブレグジット、EU崩壊。このような火種が本当に発火してしまえば世界経済も大きな打撃を受けます。

経済学者の高橋洋一先生はブレグジット単体でリーマンショック級のインパクトを世界に与えるとおっしゃっています。

リーマンショック以上だ、リーマンショックの数倍だといっている方もいます。

EUと中国の結びつきはかつてないほど強力になっています。

2018年の中国の輸出相手国の1位は約480ビリオンドルとアメリカですが、EUの主要輸出国であるドイツ、イギリス、オランダの3カ国だけで208ビリオンドルあり、これは日本の147ビリオンドルより多いです。

ですからEUの足元がぐらつくと勿論中国経済にも影響をきたし、結果日本にももちろんとばっちりがきます。

リーマンショックとブレグジットの性質は違うので金融危機は起きないという意見もありますが、ヨーロッパの金融の中心地シティがからむこととそれに連鎖してドイツ銀行などデリバティブを多く所有する銀行が倒産すれば金融危機にもなりえます。

コントロールが効かなくなっている資本主義からの脱却時期なのかもしれません。