トーマス・クック経営破綻と旅行業界・旅行代理店の未来

旅行代理店トーマス・クックが経営破綻

2019年9月23日にイギリスはロンドンに本部を置く旅行代理店トーマス・クックが破産申請を行ったため、世界各国で約60万人の人々が帰国できず現地で足止めを食らっています。

経営破綻したので支払い能力がなく帰りの便は航空会社がキャンセルしたのでしょう。

旅行中の人は当然ながら、新婚旅行などで高額なプランを既に予約している人々もとても不安に感じています。

日本では格安旅行代理店のてるみくらぶが2017年に経営破綻したのが記憶に新しいですね。

このような時に返金されずに泣き寝入りしなければならないこともありますが、航空チケットの支払いをクレジットカード払いにしておくとカード会社が返金に応じてくれる場合もあります。

私はキャッシュレスクレジットカードに否定的な立場を普段とっていますが、クレジットカードも時にはこのように防衛手段にもなりうるのです。

世界の旅行代理店のパイオニア、トーマス・クックとトーマス・クックグループ

1800年代生まれのイギリスの実業家トーマス・クック氏がロンドン万博への格安列車・馬車チケットの売出しや労働者階級への日帰り名所ツアーなどを開催して旅行というものにレジャーの要素があるということを民衆に伝えヒットさせたのでした。

1855年にはヨーロッパツアー、1866年にはアメリカツアーを開催しました。

民衆に娯楽としての海外旅行を植え付けたのも彼が嚆矢であるとされています。

1871年には息子のジョン・メイソン・クックと共同で社名をThomas Cook & Sonとしました。

2003年からはCaledonian航空とフライングカラーズ航空が合併したJMCエアーを買収してトーマス・クック航空として航空会社も運営していました。

原点から150年ほどたち、2007年の2月にトーマス・クックAGとマイトラベルグループ(英国)が合併しトーマス・クック・グループとなりました。

トーマス・クックは世界で最も古く最も知られた旅行代理店でした。

中国復星国際やヘッジファンドが経営破綻の一因となっているのか

つい1ヶ月前の8月28日にトーマス・クック・グループは株主に対して資本増強をする計画があることを伝えていました。

それは7月に中国のコングロマリット復星国際の旅行部門(Fosun Tourism Group)が1000億円の資金提供を持ちかけたからです。

見返りはトーマス・クックの旅行部門の75%と航空部門の25%の株式取得です。(復星国際はすでのトーマス・クックの筆頭株主)

復星国際はフランスのバカンス旅行会社クラブメッドを2012年に買収しており、中国国内の旺盛な海外旅行需要に応える形で旅行産業の拡大に努めています。

しかしトーマス・クック・グループは1000億円では足りなかったようで9月23日にロンドンの裁判所に破産申請。

ヘッジファンドがトーマス・クックグループのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を購入して大儲けしたとの事です。

このようなヘッジファンドの動きはしばしば再建しようとしている企業の足を引っ張ることになります。

イギリス政府はトーマス・クックの救済はしない方針ですが、この破綻の調査に乗り出すことを決めています。

ブレグジットそして熱波がダメ押しした?

2019年9月現在まだEUから離脱していないイギリスですが、国内が混乱しているなか少なからず旅行業界にも影響を与えているのではないでしょうか。

ブレグジットのまとめ記事はこちら

そしてこの夏のヨーロッパの殺人的熱波(6月にはフランスで45度を超えた)は確実に旅行者の人数を減らしたことでしょう。

実際にヨーロッパの多くの国で脱線のおそれがあるとして列車の運行が停止されたりしました。

2018年、富山の新港で電車が脱線しましたが、暑さでレールが歪んだことが原因でした。しかし気温は40℃までは勿論達していません。

店舗型旅行代理店は必要か?その将来性はあるのか

インターネットの普及で世界中から旅行先の治安やホテル、レストラン情報が得られるようになったので、お年寄り以外はツアーで行く意味があまりないかもしれません。

LCCの台頭で団体でのツアー割引率が低くなっていること、ツアーなどでは現地とタイアップした土産物屋やレストランなどを強制的に回らせられること、あれもこれも詰め込むためスケジュールがたいとでのんびりできないなど、格安のパックツアーは不満ばかりになってしまいます。

ネットで格安チケットを買って自由に現地を周るのが若者には合っています。

ネットでの格安チケット購入で一つだけ注意が必要なのはチケットに性と名が逆に印刷されているなどの手違いが合った場合、問い合わせ先が海外の代理店だったりすることがあります。

その時の交渉は英語でしなければならないので、直前で慌てないようにチケットに不備がないかの確認は届いたチケットやeチケットはすぐチェックしましょう。

お金をたっぷり積めれば良い質のツアーが楽しみますから、高齢者専用として介護も含むツアーなどでの生き残りしか考えられません。

ネットに不慣れでお金持ちの高齢者は結構いますが、彼らは海外より国内旅行を好む方が数的には多いです。法務省の出入国管理統計によるとシニア層の海外旅行の伸びは低いです。

シニア層の国内旅行に絞って介助ケアも万全で売り込んでいくとよいのでしょうか。こうなってくると介護・福祉的役割も増え、若い人には魅力のない職種ということになります。

旅行業界への就職の志望動機はどんな建前があれ、本音は旅行が好きだからということでしょう。しかし、業務は旅行と関係があるだけでツアーコンダクターでなければ忙しすぎて自らが旅行に行く機会すら奪われてしまうでしょう。

大学学生の就職希望に変化が見られます

マイナビと日経新聞が共同で毎年大学生就職希望ランキング調査を実施しています。

旅行業を選ぶ学生が多い文系のランキングに絞って2003年から見てみると、2017年度卒業の大学生までずっと1位はJTBが死守していました。

JAL(日本航空)は2010年に一度破綻し、2012年に再上場を果たしましたが、2010年から2012年はランク外になったものの2013年には再び4位に返り咲き2019年までトップ10入りしています。

そして2019年卒の人気ランキングでJTBが初の4位になりました。2020年卒ではまた1位になったのですけれど、、。

社会経験の少ない学生には旅行業は英語も使えてインターナショナルな格好のよい仕事に映るのでしょう。

しかし旅行を成立させるノルマはキツイようですし、交通手段やホテルの予約業務は誰でもできる仕事、膨大な旅行の情報を蓄積したとしても転職などで潰しが効くような知識ではありませんし、何が学生を魅了しているのかわかりません。

ネットで何でも完結でき、より安いものを選ぶ傾向

チケットの予約もホテルの予約も現地の足もウーバーでなんでもネットで素早く処理できます。

Aurbnbなどの民泊を利用すると宿泊費も圧縮できます。

なんでもスマホがあれば個人で解決できる時代になっておりこの流れがさらに加速すると旅行代理店は金持ちから圧倒的に支持を得ることができる一握りだけが生き残れるのかもしれません。

世界で最古、最も有名な旅行代理店トーマス・クックの経営破綻から旅行業界は旧態依然としたシステムやサービスの根本的見直しを強いられるかもしれませんね。

トーマス・クックは実店舗が500もあったそうです。