イギリスの金融ベンチャーグリーンシル・キャピタルが破綻。ソフトバンクへの影響は?

英国と豪州に拠点をおいていたグリーンシル・キャピタルが経営破綻

サプライチェーンファイナンス(SCF)に焦点を当てて2011年にレックス・グリーンシル氏によって創設された金融ベンチャーがグリーンシル・キャピタルです。

従来の銀行サービスをグリーンシル銀行が担当し、クレディ・スイスなどと提携してファンド運用をしていました。

オーストラリアの農家の息子だったレックス・グリーンシルは銀行が体力のある大企業ばかりに融資し中小企業を蔑ろにしている現実に辟易とし、企業の売掛金を取引企業に代わって速やかに支払い運転資金のショートを手数料をもらって防ぐというファクタリング事業をはじめました。


世界経済フォーラムに参加するレックス・グリーンシル氏(画像:PA)

サプライチェーンファイナンスはサプライヤーには手数料をとり売掛金を速やかに支払い、バイヤーには手数料をとりサプライヤーへの支払いを延長させることにより双方にメリットがある手法として宣伝されています。

しかしブロックチェーン技術を使うことにより会計が不透明になることが多く、少なくない大企業がサプライチェーンファイナンスを悪用していると指摘されています。

グリーンシルキャピタルも不正会計による資金調達をしていたと見られ経営が回せなくなって今回の破綻につながった模様です。

グリーンシルキャピタルの破綻はクレディ・スイスに大損害を与えた

クレディ・スイスはグリーンシルキャピタルから有価証券を購入し、それを個人投資家や年金基金に売りさばいていました。グリーンシル破綻によりそれらの販売は停止に追いやられました。損失をださせた投資家への返金も48億ドルに登ります。損失総額は5000億円ほどになるでしょうか。

しかしながらグリーンシルキャピタルファンドを顧客に売るに当たってグリーンシルの不正会計を見抜けなかったのはクレディ・スイスの責任でもあるのではないかとの見方も出てきており行き先不透明になってきております。

このような状況になり当初は投資家への損失を補填しない強気の態度だったのを軟化させて返金に応じているようです。

クレディ・スイスは日本でも超富裕層を相手にビジネスをしており、行政処分や受けたり不祥事を数回起こしてきました。汚いビジネスばかりしていると世界から総バッシングされる可能性もあります。

ソフトバンクブループのグリーンシルキャピタルへの投資額は


(画像:AFP)

グリーンシルキャピタルの破産はイギリス国内だけではなく世界に影響を与えています。日本も例外ではありません。

2019年にソフトバンク・ビジョン・ファンドはグリーンシルキャピタルに1600億円の投資をしており、実質上ソフトバンクがグリーンシルキャピタルの屋台骨を支えていた形となります。

そしてグリーンシルキャピタルからソフトバンク・ビジョンファンドの投資企業に融資が回っていました。

投資先企業例としては米建設スタートアップで経営難に喘いでいて、つい先日の2021年1月にソフトバンクグループから206億円の追加融資を受けたばかりのカテラ、インドのホテルチェーンOYOルームズ他多く含まれていたようです。

ソフトバンクGは自分の投資先に融資するための金融ベンチャーに投資して焦げ付かせたという漫才みたいな状況になっていまが利益相反である可能性があります。

ソフトバンクは倒産を回避できるか?

東京海上はグリーンシルへの取引信用保険提供で被害を受けたか

東京海上ホールディングスはグリーンシルキャピタルの取引信用保険を提供していましたが、保険契約の有効性に問題があると調査しています。

保険は東京海上が2019年4月に買収したオーストラリアの保険代理店BCCが5000億円で取り扱っていましたが、2019年7月には契約更新しないとグリーンシルに通達したとのことです。

7月以前の契約分の損害がどれくらいになるかということです。東京海上ホールディングスは損害は限定的で2021年3月期の業績予想の変更はないとの発表をしました。

今後どうなってくるのか注視が必要です。

イギリス第三位の鉄鋼会社リバティースティール


リバティースティールを運営するサンジーブ・グプタ氏(画像:PA)

私は日本人なので先にソフトバンクGや東京海上への影響について述べましたが、イギリスで一番影響を受けたのは鉄鋼業界の人々です。

サンジーブ・グプタ氏はインド生まれのイギリス人ビジネスマンです。父親、祖父、ともにインドの実業家でGFGグループ(グプタ・ファミリー・グループ)を形成しています。

「鋼の救世主」と呼ばれているサンジーブ・グプタ氏によって管理されているGFGアライアンス系列のリバティースティールはグリーンシルキャピタルの破綻により資金繰りが急激に悪化。イギリス政府に260億円の支援を要請していることが3月に判明しました。

しかしグリーンシルから多く借りている事実は不透明な資金調達を意味し調査が行われています。万が一リバティースティールが倒産すると3000人もの雇用が失われることになり、国有化の話も出ています。

イギリスの失業率は2021年2月の段階で7.5%となっており、この問題はイギリス経済にさらなる影を落としそうです。

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デービッド・キャメロンとグリーンシルキャピタルの関係

キャメロン元首相は2018年(首相在任は2016年7月まで)からグリーンシルキャピタルの特別顧問となり報酬を得ていました。

コロナの影響で資金繰りに苦しむ企業への融資元としてグリーンシルキャピタルを推すようにボリス・ジョンソン内閣の財務大臣であるリシ・スナック氏にテキストメッセージや電子メールを送る所謂ロビー活動をしていたことが判明しています。

リシ・スナック財務大臣はパンジャーブ州出身のインド人移民であり、サンジーブ・グプタ氏も同じインド出身ということもあり口利きしやすかったと世間に見られても仕方がありません。

キャメロン氏の調査が進めば大きな政治スキャンダルとして発展する可能性があります。

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