EUニュース・ブレグジットをわかりやすく。イギリスEU離脱の影響と今後
イギリスはなぜブレグジットする流れになったのか
さあ、混乱真っ只中のイギリスでありますが、ブレグジット、何それおいしいの?って方にも分かりやすく説明いたしますのでしばしおつきあいおねがい致します。
2016年6月23日木曜日に行われた国民投票の結果により、ヨーロッパユニオン(EU)からの離脱が決まっちゃいました!
長く続く迷走の幕開けでございます。
イギリスの正式名はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)です。ながいなあ!
北アイルランド、スコットランド、イングランド、ウェールズの4国からなっているのですね。
そして当然その4カ国で投票が行われました。地域別の結果は次の画像の通りです。
出典:ニューヨークタイムズ
イギリス全体では残留派が48%、離脱派が52%で離脱の流れになりました。
北アイルランド、スコットランド、そして金融センターシティのあるロンドンでは残留派が優勢でした。
ブレグジットの根底にあるものはイギリスの主権を取り戻すこと。つまり反グローバルです。
世界のグローバル化をアメリカとともに主導した国イギリスが今度はそれをやめると言っているのです。
このことを常に頭に入れておくと起きていることが理解しやすくなります。
ドイツの動きもブレグジット理解に必須
フランスの歴史人類学者エマニュエル・トッド氏によるともはやヨーロッパというものは存在しておらず、あるのはドイツ的ヨーロッパだと述べています。
つまりドイツ=EUであり、イギリスは英語圏全ての代表(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド=ファイブアイズ)として捉えることができます。
ブレグジット問題はドイツVSファイブアイズと見ることもできます。このように大きな塊で考えると理解しやすいこともあります。
北アイルランド、スコットランドが残留を希望した理由
アイルランドと北アイルランド(イギリス)には国境がありますが、検問なしでお互い自由に出入りできます。
シェンゲン協定でパスポートなしでEU間を周れます。超らくちん。
EU離脱すると検問が復活したり同じ島内でEU加盟国と非加盟国が共存する混乱が生まれます。それで残留派が多かった。
EU離脱でアイルランドと北アイルランドに国境が復活するとアイルランド統一を望むIRAがまたテロを大々的に起こしていくことも考えられます。
スコットランドに関しては、EUからではなくイギリスから離脱したいという意図があります。
詳しくはスコットランドの歴史をウィキペディアとかで見てね♬
2014年のイギリスからの独立に関する住民投票では独立反対に55%が投じられました。
イギリスが完全にEU離脱した場合はスコットランドがまた住民投票で独立の是非を問う可能性があります。
国家としてイギリスはEU離脱しないほうがお得そうですね。
EU離脱問題が大事である理由
イギリスにとってヨーロッパは最重要かつ最大の海外投資市場であり、EUの一員であることはロンドン(シティ)が国際金融センターとしての立場でいられることの理由でもありました。
EU市場に自由にアクセスできたからです。
EU離脱すると関税は復活しますし、貿易には通関も必要になりスムーズな物流も人の流れにもブレーキがかかります。
お役所仕事はどの国でも遅いので有名ですよね。
ブレグジット問題の混乱の中、これまでに250以上の金融関係の会社が既にイギリスからEU各地へとその拠点を移しています。
国のことや現地の人々の幸せなど何も考えない輩は金のためにイナゴの大移動をするわけです。
ですからイギリスがEUを離脱しようがしまいがもう既に影響は出てしまっていることになります。
EU残留派が伝えてきたこと
イングランド銀行も国際通貨基金(IMF)もEU離脱がいかにイギリス経済に打撃を与えるかについて述べていました。
イングランド銀行は合意なしのブレグジットでポンドが25%落ち、GDPも8%縮小すると予測しました。
ポンド売りでイングランド銀行を潰した男となったジョージ・ソロスの話はこちら
IMFはブレグジットが決定されたことだけで世界経済の成長率を下方修正しました。
経済協力開発機構(OECD)もブレグジットに反対、実現した場合は実現後4年間で国民一人当たり給料の一か月分相当を失うことになると述べました。
イギリスの平均月収は24万円くらいなので人口の6600万人をかけると16兆弱となります。これはイギリスGDPの6%弱に相当しとんでもない額の損失となります。
英産業連盟(CBI)はイギリス国民の雇用や投資、そして経済成長がブレグジットによって損なわれると発言しました。雇用も100万人分が失われるとしています。
これらは至極真っ当な意見ですが、エリートの発言であり、経済の恩恵を全く感じていない低中間層、低所得者層の心には何も響きませんでした。
どこかの侍の国も同じですよね。
EU離脱派中心は前外相ボリス・ジョンソンや英国独立党のナイジェル・ファラージと国民
左が大げさパフォーマンスがお得意の英国独立党(UKIP)の党首ナイジェル・ファラージ氏、右が前ロンドン市長、前外務大臣でイギリスのトランプと呼ばれているボリス・ジョンソン氏です。やっちまった感がでています。ジョンソン氏は2019年7月に首相となりました。
しかし両氏とも顔芸が達者であります。
■EUの一員ではなく国家としてのイギリスの主権を取り戻したい!
■EUから貰えるお金よりEUへ出すお金の方が多くて損だ!(EU拠出金問題)
■移民の社会保障制度のフリーライドは許さん!
■EUの規制のせいで自国の企業が儲けられない!
このようなものが彼ら二人を含め離脱派の主張でした。
国家としての威厳を取り戻したい高齢者、移民に仕事を奪われている低所得者層の国民に支持されました。
「イングランド銀行やIMF、OECDの言うことを聞いてEU残留したところで今まで同じじゃ俺たちの生活は何もかわらない」
このように考えた低所得者の方が大勢いたことが国民投票の結果として現れてしまいました。
イギリスの失業率は3.9%。若年層では10.6%となっています。日本は全体で2.4%、若年層は4%ほどです。
結果的にはイングランド銀行などの残留派の主張は正しく、多国籍企業がブレグジットの影響でイギリスをされば低所得者の働き場所がなくなり、さらに失業率が高くなります。
しかし格差が広がり、富めない者はミラクルにかけたくなるくらい追い詰められているのです。
EUへの拠出金を国民健康保険(NHS)に回そうキャンペーン
「私たちはEUに週350ミリオンポンド(約440億円)週当たり送っています。離脱してそのお金を国民健康保険に充当しましょう!離脱に一票を!主権を取り戻そう。」
イギリスは国民健康保険(NHS)に入っていれば基本的に医療費は無料です。
しかし財源が足りていないため優秀な医者は無料ではない高額の私立病院か海外の病院に逃げています。
よって医療費が無料になる国立の病院の先生はEUからの出稼ぎ外国人医師ばかりという現状になってしまっています。
しかも無料だと順番待ちが長く、(病院に行ってからの順番ではなく3日後、1週間後という意味での)軽いものは市販の薬で治すというのが主流のようです。
「ちょっとお腹の調子が悪いのですけど」
「はい分かりました。それでは1週間後におこしください!」
「その頃にはもう治っとるっちゅーねん!」ってことです。
そして医師側から言わせれば「じゃあ我慢して病院にくるなっちゅうねん!」と言ったところでしょうか。
そしてお金持ちはNHSを使わず私立病院でサクッと検診してもらうようです。
ブレグジットをしてもEU拠出金の全てをNHSにぶち込むはずはなく、逆に人の流れに壁ができるので安い外国人医師がイギリスに入って来られない可能性もあり、欺瞞であると叩かれていました。
しかしこの目立つ赤いバスキャンペーンは投票結果を見ると完全に有効だったことになります。特に低所得者を騙すには絶好だったでしょう。
無料のまま、待たずに質の良い医療を受けられれば誰でも嬉しいですし。まあそんなことは起こりえないのですが、、。
ブレグジット問題の諸悪の根源はデイビッド・キャメロン元首相か
「グッド!じゃねーよこのやろー!」とキャメロン元首相のせいで今のイギリスが大混乱していると考える国民が約6割ほどいるようです。
EUの加盟条件を自国のために少しでも有利にしようと交渉していたキャメロン首相でしたが、昔オウム真理教の麻原彰晃元死刑囚が信者に「修行するぞ、修行するぞ」と信者に洗脳していたように、キャメロン首相も「離脱するぞ、離脱するぞ」とEU側を脅していたのです。
こっちの条件を飲まないならEU離脱の国民投票も辞さないよと。やらなきゃ意味ないよと。
このようなパフォーマンスは次の国民議会選挙で勝ちたいからでした。
目の上のたんこぶはEU大嫌いのファラージ氏が率いる英国独立党。
彼らに攻撃されないためにもEUに強気な態度を見せることが必要でした。
EU離脱で国益が損なわれることを知っているキャメロン氏は離脱を脅しに使いながらも全く離脱を望まない残留派です。
国民投票を約束して挑んだ2015年の選挙ではめでたくキャメロン氏の保守党が単独過半数を獲得して勝利したのでした。
「え!?マジで?単独過半数?連立じゃないの?」
顔面蒼白となったキャメロン氏でした。
彼はこんなにぶっちぎって勝つとは思ってもおらず、連立政権となり、連立相手から反対されるから国民投票なんてしなくてもOK!テヘペロとローラのように考えていたのでした。
単独政権なら国民投票の公約まもらないといけないじゃん!
ガーン!なお顔のキャメロン元首相です。
キャメロン「まあでも普通に考えて残留でしょ。」
国民「離脱しようぜ!」
キャメロン「え?」
そして離脱したくないのにEU離脱が国民投票で決まってしまいました。
保険金詐欺を働こうと自宅に火をつけ全焼したけれど火災保険に入るの忘れてた!みたいな間抜けな状態に陥ったのです。
そして彼は残留派だったので選挙に勝ったにもかかわらず辞任することになってしまったのです。キャメロンにとってはまさに青天の霹靂だったのです。
離脱協定案が否決され続けるテリーザ・メイ首相
マーガレット・サッチャー以来の女性首相となったテリーザ・メイ氏。
サッチャー氏が166cm、メイ氏は172cmです。大柄だけどなかなかかわいらしいおばあちゃんだなと思う私がいます。
もともと残留派ですが、国民投票で決まった以上離脱の方向で話をまとめます。ということで日々活躍していたテリーザ・メイ首相です。
ブレグジットは周知の通り3種類ありまして、最悪なものから(世界に与える影響で)合意なきブレグジット、ハードブレグジット、ソフトブレグジットになっております。
無秩序にEU側との何の決め事もなく離脱するのが合意なきブレグジット。
欧州だけでなく世界が大混乱する可能性大です。
ハードブレグジットは移民の流入阻止が第一目標でそれ以外ではEU脱退と等しい。これも世界に与える負の影響は大きいです。
ソフトブレグジットは人の流れは阻止した上でEUの自由貿易にのっかるというEU各国に許してもらえそうもないかなりずうずうしいプラン。
これまでにメイ首相とEUが合意した離脱案が3回議会で否決されています(2019年4月現在)
残留派は何が何でも反対しますし、離脱派は離脱派で案がEUに対して譲歩しすぎだと言って反対しています。
全く前に進まない!
というわけで長期の離脱期限の延長に入りました。2019年10月31日までです。
まだまだ予断を許さない情況は続きます。
メイ首相涙の辞任表明
6月7日に保守党の党首を辞めることを発表しました。
その日以降に新党首が決まるのでそれまでは首相をするようです。
EU離脱のためにそして祖国のために全力を尽くしてきたと涙を流しながらの会見となりました。
ボリス・ジョンソン氏がイギリスの首相に就任
7月24日にEU離脱派のボリス・ジョンソン氏がイギリス代77の首相となりました。
残留派だったメイ元首相から離脱派のボリス・ジョンソン氏に代わりグダグダ感は減少することになります。EUとの合意があろうがなかろうが10月31日には離脱するとずっと言い続けている彼なのでどのような形で離脱するのかに注目が集まっています。
苦戦を強いられているボリス・ジョンソン首相
合意なき離脱を阻止しようとする野党、離脱を推し進めようとする与党保守党の中にも造反し党を除名になった議員が21人もいます。
なかでもボリス氏にとってショックだったのはニコラス・ソームズ議員の造反でしょう。ニコラスは1940年代から50年代にイギリスの首相を務めたウィンストン・チャーチルのお孫さんなのです。
ボリス氏はウィンストン・チャーチルの信奉者で、彼のことが好きすぎで本まで出版しています。
本物のリーダーとして絶賛する方も多くいらっしゃいますが、ロスチャイルド家の代理人であったとう説が拭いきれない以上、ボリス・ジョンソン氏を考察するときにもこのことは忘れてはならないと思うのです。
とりあえずEU離脱の期限を2020年の1月31日にする案もありますので、それすらまた伸び数年ずるずる行く可能性もあります。
EUとイギリスがブレグジットに合意
2019年10月17日、欧州委員会のユンケル委員長がイギリスとフレグジットに関して合意したとの発表がありました。
英議会で承認されれば合意ありのブレグジット達成になります。
Newsweekはイギリス経済にとって不利な内容だと伝えています。分析はこれからです。
そして12月12日、イギリスで総選挙が行われボリス・ジョンソンの保守党がボロ勝ちしました。これで労働党が掲げていたもう一回国民投票をして再度ブレグジットの是非を問うことはできなくなりました。
イギリスついにEUから離脱。ブレグジット成立
2020年1月31日、イギリスがとうとうヨーロッパ連合から離脱しました。そして今から11ヶ月間が以降期間となります。
移行期間が終わると旅行時にEU市民専用ゲートが使えなくなったり、EUの保険が使えなくなったりと市民生活にも影響してきます。
貿易面ではイギリスは関税などを世界の各国と個別に結ぶ必要性がでてきます。
数百億ユーロというEU拠出金を払わなくてもよくなりその浮いたお金をどのように使っていくのか。ブレグジットが凶と出るか吉と出るかはまだ先になります。
フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏の「問題は英国ではない、EUなのだ」によりますとブレグジット後、ドイツが益々調子に乗ってヨーロッパの経済制圧を加速させ、少子化問題を強引な移民労働で賄い続けることがEU諸共崩壊する危険性を内包していると述べています。
いずれにせよイギリスなき後のEUはドイツ次第ということでドイツをより知ることがEUやヨーロッパを知る鍵となります。