デフレーションとは何か。デフレは悪いことなのか。中央銀行の金融政策など

デフレーションとは何か。中央銀行の金融政策

こちらの記事でインフレーションについて学びました。

日本経済は現在デフレ状態。

デフレーションの方が身近ですね。今回はデフレについて基本知識を身につけましょう。

デフレーションの定義

物価が一定期間どんどん下がっていく状態をデフレーションといいます。

物の値段が下がることは嬉しいように一瞬思ってしまいますが、そうではありません。

なぜなら失業者も増加してしまうからです。

デフレ時は企業の利益も減るため人件費からカットしていきます。ですから失業しなくても給料は上がらない状態。

その結果、物の値段が下がっても消費活動が消極的になっている状態です。

デフレ時はお金の価値が上がる

物の値段が下がると反対にお金の価値はあがります。

以前は1万円札でないとガソリンを満タンにできなかったのに今は5000円でお釣りが来るというような。

同じ金額で以前よりたくさんの物が買えるとなるとそれはお金の価値が上がったということです。

イギリスの産業革命とデフレーション

19世紀後半、イギリスのメーカーは生産性を向上させるために蒸気機関を取り入れ、工場制機械工業が発達しました。

機械による大量生産でもちろん物価は下がります。

物資の供給が大幅に増えることは経済にプラスの面もありますがデフレを引き起こしました。

ですが年率2%と穏やかであったため、賃金も安定していてそれほど深刻な事態には
陥らなかったようです。

産業革命時の労働環境

世界恐慌とデフレーション

※画像:失業者の人々のために無料のスープやドーナツを出す店に集まる人々1929年

世界もそうですが、特にアメリカの歴史の中では最も経済的に苦労した時期でした。

失業率の急上昇、株式市場の大暴落などにより消費者は貯蓄の大部分を失ってしまいました。

農業や鉱業に従事する人々は多く製品を生産していましたが、それに値する賃金も支払われてはいませんでした。

不況を深刻にするデフレーション

私たちのほとんどは自営業でない限り、お給料というものをもらって生活しています。

デフレでボーナスはカットされるかもしれませんが賃金は比較的安定しています。

デフレ時は企業の雇用負担が大きくなっている状態です。それで正社員よりも契約社員を雇うという流れが加速します。

リストラも加速します。大変です!

物の値段が下がるのなら負債も下がって欲しいものです!

しかし借金や住宅などの各種ローンの残高は絶対下がってくれません。

車のローンが払えなくて車を取り上げられるのは致し方ありませんが、住宅ローンが払えなくてお家を取り上げられのは悲惨です。

住宅ローンは組むな!

アメリカ発のサブプライムローン問題がそうでしたね。

家を抵当で取られた上に相殺できない分の借金は残ります。

最悪ホームレスに転落してしまった人々もいます。

イギリスの美少女ホームレス

デフレを解消するために中央銀行が取る金融政策

インフレ時に中央銀行は金融引き締めの政策をとります。

デフレ時はその逆です。金融緩和政策です。

通貨の供給量を増やすために金利が下がります。

また金利を下げるのではなく民間金融機関が持っている日銀の当座預金残高を引き上げることを量的金融緩和政策といいます。

民間金融機関は顧客からの預金の一定額を日銀当座預金に入れないといけません。

そしてそれは無利子で利益を生みません。

ですから決められた額をクリアしたら、それ以上にある分は使わないと損ということで銀行は貸そうとします。

そうすると市場にお金が出回ることになります。

ではどうやって日銀はその当座預金残高を増やすのか。

それは買いオペレーションとよばれ、金融機関等がもっている国債等の有価証券を買い入れ金融機関の日銀当座預金に入れます。

日本銀行の仕組み

デフレは日本にとって悪いことなのか

インフレどころか世界はこれからデフレで蘇る(中原圭介・PHP新書)によりますと、貯蓄型経済である日本にとってはデフレである方が良いとしています。

世界一の借金大国であるアメリカ(債務2200兆円)においてはインフレになればなるほどお金の価値が下がるので借金も目減りすることになり有利(特に富裕層や企業にとって)。しかし日本のような超債権国だとデフレ(円の価値が下がらない)である方が良い状態と書かれています。

日本の経済学者はアメリカで学んだ者が多いのでリフレ派(インフレ推奨)が幅を利かせることになりますがそのこと事態が出発点から間違っていると指摘しています。

しかしながら我々が真っ只中にいるデフレで富裕層を抜かして苦しんでいるのが日本の現実ではないでしょうか。筆者は欧米の賃金が上がらない状態のインフレより我が国のデフレの方がマシであると主張しあまり喜べません。

格差社会が年々酷くなっている日本ではありますが、アメリカほどではないのはデフレだからという主張にあまり救いを感じません。

筆者は後半で、アメリカのシェール革命でエネルギー価格が下がることから多くのものの物価も下がり世界がデフレになっていく、そして安価なシェールガスにつられて世界がアメリカに工場を作り、世界の工場はもはや中国ではなくなってしまうと述べています。

日本を理想的なデフレ社会にするためには政府主導で「農業」「観光」「医療」の3分野で成長産業を育成していくことだと締めくくっています。

コロナウイルス後の世界経済はいかに

デフレに関して書いてきましたが、第二次世界大戦に匹敵するこのコロナウイルス禍の後の世界はこれまで経験したことのないような世界になりそうです。

あらゆる国のあらゆる産業が大打撃を受け、リセットられたところから世界はそれぞれ再建していかねばなりません。

食料自給率が40%を切っているような我が国はサバイバル状況下で大変不利であるのは周知の事実ですので、「農業」「観光」「医療」のなかでもとりわけ農業を大切にしてくべきではないかと感じました。